過去のセミナー
▶ 2023年度
第14回
- 【日時】2023年12月12日(火)17:00~18:30
- 【場所】岡山大学環境理工棟1F101 & Zoom 配信によるハイブリッド形式
- 【講演者】谷地村 敏明(東北大学)
- 【講演題目】正則化混合ガウス最適輸送と単一細胞データ解析への応用
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【講演要旨】
最適輸送理論は確率測度間の距離や最適マッチングを提供する変分問題として知られている.近年,正則化項を含む最適輸送,すなわち正則化最適輸送の進展に伴い,グラフィックス,自然言語処理,生命科学,機械学習など大規模なデータセットを扱う多岐にわたる分野で広く用いられるようになった.
本講演では,正則化混合ガウス最適輸送の理論と応用に焦点を当てる.この最適輸送は直観的には,ソースおよびターゲットとなる確率測度が共に混合ガウス分布である場合において,各ガウス分布を点と見なした離散型の正則化最適輸送と見なすことができる.まず,この正則化最適輸送と,カップリング制約を持つある連続最適輸送との収束性について考察する.さらに,この正則化最適輸送の応用として,我々が開発した時系列の単一細胞遺伝子発現データを用いた細胞分化の軌跡推論フレームワークであるscEGOTを紹介する.scEGOTを利用することで,遺伝子発現データから細胞分化の状態グラフ,各細胞の細胞分化に伴う速度,さらに遺伝子発現の動態を推論することが可能となる.始原生殖細胞の分化に関する時系列の単一細胞遺伝子発現データにscEGOTを適用することで,分化に関連する重要遺伝子を同定したことを報告する.
本講演は論文 https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.09.11.557102v1 に基づくものである.
第13回
- 【日時】2023年10月6日(金)17:00~18:30
- 【場所】岡山理科大学岡山キャンパスC3号館8階共同ゼミ室(南)& Zoom 配信によるハイブリッド形式
- 【講演者】陰山 真矢(岡山理科大学)
- 【講演題目】デイジーワールドモデルにおける温室効果と植生分布パターン
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【講演要旨】
J. E. Lovelockは,地球はそこに棲む生物とそれを取り巻く環境とが相互作用することによって,地球全体を安定化に向けて自己調節しているひとつのシステムであると考えた. このようなシステムを理想的に単純化したものがWatson-Lovelock(1983)によるデイジーワールドモデルである. デイジーワールドモデルは,惑星に棲む生物を白色と黒色の2種類のデイジーの花のみに,環境条件を温度のみにまで単純化しており,その単純さから環境問題などの様々な分野への応用が期待されている. 本発表では,2次元デイジーワールドモデルに対して解析的かつ数値的に調べた結果を紹介する. さらに,モデルに温室効果の強さを表すパラメータを加えた際の,仮想の惑星における温室効果の強弱が植生分布パターンに与える影響について得られた結果を紹介する.
第12回
- 【日時】2023年7月24日(月)17:00~18:30
- 【場所】岡山大学環境理工棟2F201 & Zoom 配信によるハイブリッド形式
- 【講演者】竹内 博志(滋賀大学)
- 【講演題目】Betti曲線による電池素材性能の特徴量探索
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【講演要旨】
電気自動車などを念頭に置いた次世代のバッテリーとして、全固体リチウム電池が研究されている。 全固体電池は液体電池より安全性が高いが、バッテリー性能と密接に関わるLi拡散係数が、現状の素材では液体電池より低い水準にある。 本研究では結晶データベースを用いて、結晶データからLi拡散係数を予測する手法を開発することを目的とし、Betti曲線とLightGBMを組み合わせることで、従来の手法より良い性能の予測手法を得た。
本講演は山崎久嗣氏(トヨタ自動車)・菊池夏希氏(トヨタ自動車)・高柳昌芳氏(滋賀大学)・江崎剛史氏(滋賀大学)との共同研究に基づくものである。
第11回
- 【日時】2023年6月19日(月)17:00~18:30
- 【場所】岡山理科大学岡山キャンパスC3号館8階共同ゼミ室(北)& Zoom 配信によるハイブリッド形式
- 【講演者】古屋 貴士(島根大学)
- 【講演題目】Fine-tuning neural-operator architectures for training and generalization
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【講演要旨】
近年, ニューラル作用素と呼ばれる無限次元関数空間上の作用素を近似するニューラルネットワークが提案された. ニューラル作用素は, 特に偏微分方程式の解作用素の学習において, 離散不変な学習が可能であることから, 従来の離散方法に依存した学習よりも顕著な成功を収めている. 本講演では, 汎化能力に強化したニューラル作用素の改良版を提示し, 標準的なニューラル作用素と改良版との数値実験結果, 汎化誤差の理論解析結果について紹介する. 数値実験については, ヘルムホルツ方程式における波の伝搬速度から解への作用素学習について焦点を当てる.
本講演は, Jose Antonio Lara Benitez(Rice University), Florian Faucher(Université de Pau et des Pays de l'Adour), Xavier Tricoche(Purdue University), Maarten V. de Hoop(Rice University)との共同研究に基づくものである.
第10回
- 【日時】2023年4月24日(月)17:00~18:30
- 【場所】岡山大学環境理工棟2F201(ハイブリッド)
- 【講演者】中井 拳吾(岡山大学)
- 【講演題目】機械学習による時系列データの学習と気象現象のモデリングへの応用
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【講演要旨】
リザーバーコンピューティングと呼ばれる機械学習手法が決定論的ダイナミクスの時系列モデリングに有効であり、時系列予測や力学系構造の再現性についても明らかになってきている。 これらの応用として、気象学者らとの共同研究でマッデン・ジュリアン振動と呼ばれる気象現象の時系列を予測するデータ駆動型モデルを構築した。 マッデン・ジュリアン振動は世界の気象に大きな影響を与える2週間から2ヶ月程度のタイムスケールの現象であり、長期的な気象予測をする上で最も重要な指標の一つであると考えられている。 新たに作成したバンドパスフィルタにより観測された気象の時系列データを回帰的構造を持つ時系列に加工し時間遅れ座標系を用いることで、気象分野で用いられる物理モデルの予測性能を超えるデータ駆動型時間発展モデルの構成に成功した。
本講演は、神野 拓哉(東京大学理学系研究科), 三浦 裕亮(東京大学理学系研究科), 齊木 吉隆(一橋大学経営管理研究科), 末松 環(理化学研究所計算科学研究センター), 高須賀 大輔(東京大学大気海洋研究所), 米田 剛(一橋大学経済学研究科)との共同研究に基づくものである。