過去のセミナー
▶ 2025年度
第18回
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【日時】2024年11月22日(金)15:00~16:30
(※16:45~18:15は半田山微分方程式セミナーとして佐野めぐみ氏(広島大学)にご講演いただきました。) - 【場所】岡山理科大学岡山キャンパス D1号館 2階 D0121教室 & Zoom 配信によるハイブリッド形式
- 【講演者】Eom Junyong(北海道大学電子科学研究所)
- 【講演題目】蛍光光拡散トモグラフィにおける近似ピークタイムとその応用
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【講演要旨】
本発表では、蛍光光拡散トモグラフィ(FDOT)におけるマルチプルポイントターゲットの位置同定逆問題を考える。ピークタイムは蛍光の最大濃度時刻であり、よりノイズが少ないかつ実験で観測しやすいパラメータである。逆問題の解法としては漸近解析手法を用いた近似ピークタイムを用いる。近似ピークタイムの数値的な検証を行った後に2分法アルゴリズムを提案しシングルポイントターゲットに対して位置同定問題を解決する。マルチプルポイントターゲットに対しての位置同定問題の解決のためには境界スキャンアルゴリズムを提案する。幾つかの数値実験結果を紹介して提案したアルゴリズムの効率性と安定性を論じる。
▶ 2024年度
第17回
- 【日時】2024年10月18日(金)17:00~18:30
- 【場所】岡山理科大学岡山キャンパスC3号館8階共同ゼミ室Ⅱ(北)& Zoom 配信によるハイブリッド形式
- 【講演者】八木 厚志(大阪大学情報科学研究科名誉教授)
- 【講演題目】交差拡散を伴う競合型モデルの非共存解・共存解
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【講演要旨】
本講演では,競合関係にある生物2種(密度分布それぞれ \(u=u(x,t)\) と \(v=v(x,t)\) )が,2次元領域 \({\rm Ω}\) において交差拡散効果により棲み分ける過程を数理的に記述するために導入された非線形拡散方程式系
\begin{eqnarray*} \left\{ \begin{array}{l} \frac{\partial u}{\partial t} = \Delta [(a+\alpha_{11} u + \alpha_{12} v)u] +c\nabla \cdot [u\nabla\Phi(x)] +fu-\gamma_{11}u^2 -\gamma_{12}uv, &(x,t) \in \Omega \times (0,\infty),\\ \frac{\partial v}{\partial t} = \Delta [(b+\alpha_{21} u + \alpha_{22} v)v] +d\nabla \cdot [v\nabla\Phi(x)] +gv-\gamma_{21}uv -\gamma_{22}v^2, &(x,t) \in \Omega \times (0,\infty),\\ \frac{\partial u}{\partial n} = \frac{\partial v}{\partial n} = 0, &(x,t) \in \partial\Omega \times (0,\infty),\\ u(x,0)=u_0(x), v(x,0)=v_0(x), & x \in \Omega, \end{array} \right. \end{eqnarray*}について考えます.1979年,重定・川崎・寺本[1]により導入されたこのモデル方程式(通称「重定モデル」)は,拡散項が非線形で,偏微分方程式論では「準線形放物型方程式」に分類される取扱が非常に難しい方程式です. 共存解が存在するための一般的な条件,共存解の全体構造,共存パターンの全容など多くの重要な問題が未解決のまま現在も残された状態になっています. 本講演では,モデル方程式の簡単な紹介と既存の数学解析の結果[2,3]を概説した後,「非共存解の漸近挙動」について数学解析により新しく得られた結果について報告します.次いで,この解析的結果を踏まえて,数値計算法により効率的に「共存解を探索」する手法とそれに基づく成果についても報告します.
- N. Shigesada, K. Kawasaki and E. Teramoto, Spatial segregation of interacting species, J. Theor. Biol. 79(1979), 83 - 99.
- A.Y, Abstract Parabolic Evolution Equations and their Applications, Chapter 15, Springer, 2009.
- 和書,放物型発展方程式とその応用(上・下巻),第16章,岩波書店,2011.
第16回
- 【日時】2024年7月18日(木)17:00~18:30
- 【場所】岡山大学環境理工棟2F202 & Zoom 配信によるハイブリッド形式
- 【講演者】西口 純矢(東北大学)
- 【講演題目】遅延系のダイナミクスの理論のさらなる発展に向けて
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【講演要旨】
遅延系の定式化とそれが定める無限次元力学系の研究は,J. Hale と J.P. LaSalle による論文誌 Journal of Differential Equations の創始およびその発展とともにあった.1977年には J. Hale による遅延系のテキストが出版され,遅延系のダイナミクスの最低限の基礎は整備された.しかし,ODEの力学系理論と比べたときに,遅延系に対するそれはまったく十分ではないのが現状である.本講演では,遅延系のダイナミクスの理論のさらなる発展を目的に講演者により導入された,線型の遅延系に対する新たな解の概念とそれに関して得られた結果について報告する.また,遅延系のダイナミクスの理論のさらなる発展に関する講演者の展望を述べる.
第15回
- 【日時】2024年5月16日(木)17:00~18:30
- 【場所】岡山理科大学岡山キャンパスC3号館8階共同ゼミ室Ⅱ(北)& Zoom 配信によるハイブリッド形式
- 【講演者】寺本 有花(愛媛大学)
- 【講演題目】Asymptotic behavior of non-isothermal compressible nematic liquid crystal flows in infinite layer
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【講演要旨】
Ericksen-Leslieモデルは,細長い棒状の分子からなるネマチック液晶の運動を記述する方程式である.固体と液体の間の状態にあるという液晶の性質のため,その方程式はNavier-Stokes方程式と棒状分子の方向を決めるOseen-Frankモデルから構成される.本講演では,無限層状領域で非等温状態下における,簡略化されたEricksen-Leslieモデルの静止定常解まわりの解の存在とその漸近挙動について得られた結果を紹介する.
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本講演は,JSPS科研費(課題番号:22K03425)の助成を受けたものです.
▶ 2023年度
第14回
- 【日時】2023年12月12日(火)17:00~18:30
- 【場所】岡山大学環境理工棟1F101 & Zoom 配信によるハイブリッド形式
- 【講演者】谷地村 敏明(東北大学)
- 【講演題目】正則化混合ガウス最適輸送と単一細胞データ解析への応用
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【講演要旨】
最適輸送理論は確率測度間の距離や最適マッチングを提供する変分問題として知られている.近年,正則化項を含む最適輸送,すなわち正則化最適輸送の進展に伴い,グラフィックス,自然言語処理,生命科学,機械学習など大規模なデータセットを扱う多岐にわたる分野で広く用いられるようになった.
本講演では,正則化混合ガウス最適輸送の理論と応用に焦点を当てる.この最適輸送は直観的には,ソースおよびターゲットとなる確率測度が共に混合ガウス分布である場合において,各ガウス分布を点と見なした離散型の正則化最適輸送と見なすことができる.まず,この正則化最適輸送と,カップリング制約を持つある連続最適輸送との収束性について考察する.さらに,この正則化最適輸送の応用として,我々が開発した時系列の単一細胞遺伝子発現データを用いた細胞分化の軌跡推論フレームワークであるscEGOTを紹介する.scEGOTを利用することで,遺伝子発現データから細胞分化の状態グラフ,各細胞の細胞分化に伴う速度,さらに遺伝子発現の動態を推論することが可能となる.始原生殖細胞の分化に関する時系列の単一細胞遺伝子発現データにscEGOTを適用することで,分化に関連する重要遺伝子を同定したことを報告する.
本講演は論文 https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.09.11.557102v1 に基づくものである.
第13回
- 【日時】2023年10月6日(金)17:00~18:30
- 【場所】岡山理科大学岡山キャンパスC3号館8階共同ゼミ室(南)& Zoom 配信によるハイブリッド形式
- 【講演者】陰山 真矢(岡山理科大学)
- 【講演題目】デイジーワールドモデルにおける温室効果と植生分布パターン
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【講演要旨】
J. E. Lovelockは,地球はそこに棲む生物とそれを取り巻く環境とが相互作用することによって,地球全体を安定化に向けて自己調節しているひとつのシステムであると考えた. このようなシステムを理想的に単純化したものがWatson-Lovelock(1983)によるデイジーワールドモデルである. デイジーワールドモデルは,惑星に棲む生物を白色と黒色の2種類のデイジーの花のみに,環境条件を温度のみにまで単純化しており,その単純さから環境問題などの様々な分野への応用が期待されている. 本発表では,2次元デイジーワールドモデルに対して解析的かつ数値的に調べた結果を紹介する. さらに,モデルに温室効果の強さを表すパラメータを加えた際の,仮想の惑星における温室効果の強弱が植生分布パターンに与える影響について得られた結果を紹介する.
第12回
- 【日時】2023年7月24日(月)17:00~18:30
- 【場所】岡山大学環境理工棟2F201 & Zoom 配信によるハイブリッド形式
- 【講演者】竹内 博志(滋賀大学)
- 【講演題目】Betti曲線による電池素材性能の特徴量探索
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【講演要旨】
電気自動車などを念頭に置いた次世代のバッテリーとして、全固体リチウム電池が研究されている。 全固体電池は液体電池より安全性が高いが、バッテリー性能と密接に関わるLi拡散係数が、現状の素材では液体電池より低い水準にある。 本研究では結晶データベースを用いて、結晶データからLi拡散係数を予測する手法を開発することを目的とし、Betti曲線とLightGBMを組み合わせることで、従来の手法より良い性能の予測手法を得た。
本講演は山崎久嗣氏(トヨタ自動車)・菊池夏希氏(トヨタ自動車)・高柳昌芳氏(滋賀大学)・江崎剛史氏(滋賀大学)との共同研究に基づくものである。
第11回
- 【日時】2023年6月19日(月)17:00~18:30
- 【場所】岡山理科大学岡山キャンパスC3号館8階共同ゼミ室(北)& Zoom 配信によるハイブリッド形式
- 【講演者】古屋 貴士(島根大学)
- 【講演題目】Fine-tuning neural-operator architectures for training and generalization
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【講演要旨】
近年, ニューラル作用素と呼ばれる無限次元関数空間上の作用素を近似するニューラルネットワークが提案された. ニューラル作用素は, 特に偏微分方程式の解作用素の学習において, 離散不変な学習が可能であることから, 従来の離散方法に依存した学習よりも顕著な成功を収めている. 本講演では, 汎化能力に強化したニューラル作用素の改良版を提示し, 標準的なニューラル作用素と改良版との数値実験結果, 汎化誤差の理論解析結果について紹介する. 数値実験については, ヘルムホルツ方程式における波の伝搬速度から解への作用素学習について焦点を当てる.
本講演は, Jose Antonio Lara Benitez(Rice University), Florian Faucher(Université de Pau et des Pays de l'Adour), Xavier Tricoche(Purdue University), Maarten V. de Hoop(Rice University)との共同研究に基づくものである.
第10回
- 【日時】2023年4月24日(月)17:00~18:30
- 【場所】岡山大学環境理工棟2F201(ハイブリッド)
- 【講演者】中井 拳吾(岡山大学)
- 【講演題目】機械学習による時系列データの学習と気象現象のモデリングへの応用
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【講演要旨】
リザーバーコンピューティングと呼ばれる機械学習手法が決定論的ダイナミクスの時系列モデリングに有効であり、時系列予測や力学系構造の再現性についても明らかになってきている。 これらの応用として、気象学者らとの共同研究でマッデン・ジュリアン振動と呼ばれる気象現象の時系列を予測するデータ駆動型モデルを構築した。 マッデン・ジュリアン振動は世界の気象に大きな影響を与える2週間から2ヶ月程度のタイムスケールの現象であり、長期的な気象予測をする上で最も重要な指標の一つであると考えられている。 新たに作成したバンドパスフィルタにより観測された気象の時系列データを回帰的構造を持つ時系列に加工し時間遅れ座標系を用いることで、気象分野で用いられる物理モデルの予測性能を超えるデータ駆動型時間発展モデルの構成に成功した。
本講演は、神野 拓哉(東京大学理学系研究科), 三浦 裕亮(東京大学理学系研究科), 齊木 吉隆(一橋大学経営管理研究科), 末松 環(理化学研究所計算科学研究センター), 高須賀 大輔(東京大学大気海洋研究所), 米田 剛(一橋大学経済学研究科)との共同研究に基づくものである。
▶ 2022年度
第9回
- 【日時】2023年2月20日(月)17:00~18:30
- 【場所】岡山理科大学岡山キャンパスC3号館8階共同ゼミ室(南)& Zoom 配信によるハイブリッド形式(関係者以外はオンライン参加とさせていただきます)
- 【講演者】秋山 正和(富山大学)
- 【講演題目】バーテックスダイナミクスモデルによる形態形成の数理モデリングとその数値計算方法に関して
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【講演要旨】
生物の形態形成の過程を細胞レベルで理解するために、Vertex Dynamics Model (V.D.M.)と呼ばれる数理モデルが考案されている。 V.D.M.は細胞を頂点の集合で表現し、その頂点位置をエネルギー汎関数の勾配系でupdateさせる方法である。 V.D.M.は、2004年頃から本多 久夫氏(神戸大)らにより開発され、生命現象への応用研究が始まったが、その後、井上 康博氏(京大)、奥田 覚氏(金沢大)らの研究により、複雑な3D形状などへも研究展開されている。 このようなことから近年、生物の形態形成の理論的研究では、広く用いられるようになってきている。 V.D.M.では、エネルギー汎関数の設計およびその最小化が肝要であるが、エネルギー汎関数の設計はある程度の指針はあるものの、最小化の方法はいくつか選択肢がある。 選択肢のうち、計算の実装が比較的容易であるという利点から、数値的にエネルギー汎関数を評価し、次の計算ステップへと進む方法が多く用いられている。 ところが、この方法は計算刻み幅を大きくとることができないなどの理由から、高速計算することは難しい。 そこで、秋山および共同研究者の須志田は、V.D.M.において多用されるエネルギー汎関数に対して、前もって手計算で汎関数微分を評価し、さらに埋め込み型ルンゲ・クッタ法(時間刻み幅を可変にできる常微分方程式ソルバー)とを併用することで、計算の高速化をはかることできる方法を開発した。
講演では、上記方法の詳細を述べると共に、この方法を応用した実際の生物現象に対するアプリケーションの例をいくつか紹介したい。
第8回
- 【日時】2023年1月24日(火)17:00~18:30
- 【場所】岡山大学環境理工棟6F610号室& Zoom 配信によるハイブリッド形式(関係者以外はオンライン参加とさせていただきます)
- 【講演者】市田 優(明治大学)
- 【講演題目】偏微分方程式の特殊解を特徴づける無限遠ダイナミクスとその応用
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【講演要旨】
講演者は,これまである楕円型・放物型偏微分方程式における特殊解の存在や形状,漸近挙動をポアンカレ型コンパクト化や(連続)力学系理論を用いて調べてきた. これは,特殊解の満たす常微分方程式系の無限遠ダイナミクスを調べる問題に帰着させることが本質的である.
本講演では,ポアンカレ型コンパクト化とそれを用いた無限遠ダイナミクスの捉え方について概説し,偏微分方程式の特殊解を調べる枠組みについて説明するとともに,講演者による最近の2つの結果を(1番目を中心に話し,2番目は時間が許せば)紹介する.
1つ目はこれまで講演者によるある空間1次元退化放物型方程式の非負の進行波解の分類(存在するものをすべて列挙し,その形状と漸近挙動を明らかにすること)の応用として,空間1次元多孔質媒質方程式の非負の進行波解の分類に関する結果と進行波解を特徴付ける常微分方程式系の無限遠からの分岐に相当する現象について述べる. この結果は坂元孝志氏(明治大学)との共同研究に基づくものである.
2つ目は高次元領域におけるKeller-Segel系の正値球対称前方自己相似解の原点付近と無限遠方での漸近挙動に関する結果である. 本結果は和久井洋司氏(東京理科大)との共同研究に基づくものである.
第7回
- 【日時】2022年8月2日(火)17:00~18:30
- 【場所】岡山理科大学岡山キャンパスC3号館8階共同ゼミ室(南)& Zoom 配信によるハイブリッド形式 学外の方はオンライン参加のみとさせていただきます.
- 【講演者】竹田 航太(京都大学)
- 【講演題目】多様体上HMCの収束定理と乱流統計への応用
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【講演要旨】
HMCの収束定理:ハミルトニアンモンテカルロ(HMC)はMCMCというマルコフ遷移を用いたサンプリング法の1種である. HMCでは状態空間に擬似運動量を加えて2倍の次元の相空間に拡張し,その上のハミルトン力学を用いて可逆なマルコフ遷移を構成することで効率良くサンプリングを行う. 多様体上のHMCについて,一般的な条件下での収束定理は知られているが,漸近的な誤差評価が未解決である.
乱流統計:2次元乱流の統計的性質を理解するために,2次元非粘性・非圧縮流れをN点渦系で近似し,系の不変測度を調べるというアプローチがある. 不変測度は系の発展方程式の長時間直接数値計算で得られるが,計算コストがN2乗のオーダーで高いことが課題である.
本講演では,まずコンパクト多様体上のHMCの漸近誤差評価について説明する. HMCの応用として,N点渦系の不変測度をモンテカルロ近似し解析結果を示す.
第6回
- 【日時】2022年7月8日(金)17:00~18:30
- 【場所】岡山理科大学岡山キャンパスC3号館8階共同ゼミ室(南)& Zoom 配信によるハイブリッド形式 学外の方はオンライン参加のみとさせていただきます.
- 【講演者】中島 健(岡山大学)
- 【講演題目】区間分解による近似の理論とその実践
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【講演要旨】
「位相的データ解析(TDA)」はトポロジーを応用してデータから有用な情報を得ようという応用数学の分野です。 TDAの代表的な道具に「パーシステンス図(PD)」があり、データに含まれるホモロジー的構造(穴や空洞など)を俯瞰的かつ定量的に描き出すことができます。 「PDを描く操作」は、多元環の表現論という純粋数学の立場からは「A_n型クイバーの表現の直既約分解を求める操作」と理解されており、この視点はPDをより強力な道具へと発展させる方法論に繋がっていきます。 本講演では、その方法論の1つとして、与えられたデータを「区間表現」という直既約因子たちの足し合わせによって近似的に表現する手法について解説し、それが現実のデータに対してどのような描像を与えてくれるのかを見ていきます。 なお、今回お話しする内容は浅芝秀人・Emerson G. Escolar・吉脇理雄らとの共同研究、および平岡裕章・大林一平・許晨光らとの共同研究に基いています。
第5回
- 【日時】2022年6月3日(金)17:00~18:30
- 【場所】岡山理科大学岡山キャンパスC3号館8階共同ゼミ室(南)& Zoom 配信によるハイブリッド形式 学外の方はオンライン参加のみとさせていただきます.
- 【講演者】町田 学(浜松医科大学)
- 【講演題目】偏微分方程式の逆問題の逆級数による再構成法
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【講演要旨】
方程式の解の境界値からその方程式の係数を決める逆問題を考える。 方程式が線型でも解と係数の関係は非線型であり、境界値を係数の級数として表すことができる。 与えられた境界値を使いこの級数から未知の係数を決めることが、ここで考える逆問題である。 このような逆問題は昔から様々な分野で考えられてきた。 級数の1次の項までとって線型近似するボルン近似がよく知られている。 未知の係数を既知の境界値の級数として書き、線型近似をせずに再構成する逆問題の解法がこの10年ほどの間に発展した。 本講演ではこの逆級数の方法を紹介する。 従来の線型近似において、指数関数の肩を級数で表すリトフ近似の方がボルン近似よりも実用的であることが、光トモグラフィーなどの逆問題の研究で知られている。 本講演では、最近提案した逆リトフ級数について、その収束や誤差評価について述べる。
第4回
- 【日時】2022年4月26日(火)17:00~18:30
- 【場所】岡山理科大学 C3 号館8階応用数学科共同ゼミ室(南,予定)& Zoom 配信によるハイブリッド形式 学外の方はオンライン参加のみとさせていただきます.
- 【講演者】長山 雅晴(北海道大学)
- 【講演題目】自己駆動体運動に対する反応拡散系モデル
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【講演要旨】
変形を伴う自己駆動体運動を記述する数理モデルを反応拡散系によって表現することを考える. この数理モデルは,あるパラメータをコントロールすることで液滴運動のような変形する自己駆動体運動から固体樟脳のような変形しない自己駆動体運動まで表現可能であることを数値計算によって明らかにする. 次に,反応拡散系モデルに対する特異極限方程式を形式的に導出し,空間1次元問題ではこれまで研究されている自己駆動体運動モデルと一致することを示す. 空間2次元問題では,自己駆動体を閉曲線で近似したエネルギーL2勾配流法によって導出される自由境界問題と一致することを示す.
▶ 2021年度
第3回
- 【日時】2021年11月1日(月)17:00~18:30
- 【場所】岡山理科大学 C3 号館8階応用数学科共同ゼミ室(南)& Zoom 配信によるハイブリッド形式 学外の方はオンライン参加のみとさせていただきます.
- 【講演者】高津 飛鳥(東京都立大学)
- 【講演題目】情報幾何におけるダイバージェンスとWasserstein勾配流
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【講演要旨】
ユークリッド空間における標準正規分布に対する Kullback–Leibler ダイバージェンスのWasserstein 勾配流は Fokker–Planck 方程式である. そして標準正規分布に対する Kullback–Leibler ダイバージェンスはWasserstein 距離関数に関して強凸関数であり,この強凸性は Fisher計量と標準正規分布に対する Kullback–Leibler ダイバージェンスを比較する対数Sobolev不等式を導く. 本講演では情報幾何におけるダイバージェンスを用いて,この議論を他の発展方程式に統一的に拡張する方法を紹介する.
第2回
- 【日時】2021年7月8日(木)17:00~18:30
- 【場所】岡山理科大学 C3 号館8階応用数学科共同ゼミ室(南)& Zoom 配信によるハイブリッド形式
- 【講演者】辻川 亨(宮崎大学)
- 【講演題目】細胞極性モデル方程式の定常解の存在と安定性について
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【講演要旨】
Y. Mori, A. Jilkine, L. Edelstein-Keshet (2011)は細胞の極性化を記述するモデル方程式を提唱し、主に数値計算による大域的な定常解の解構造を示した. 本講演ではこの方程式のある種の極限系である積分制約条件付きのスカラー反応拡散方程式につて、その定常解の大域的解構造および安定性に関する解析結果を報告する. 方程式の特徴から、完全楕円積分を用いた定常解の表示式が得られる. これを用いて、解構造及び安定性を議論することができる. 本講演では対称解および特異性を持つ解の安定性を中心にお話しする. また、保存量に依存して、大域的解構造は異なり、2次分岐および不完全分岐などの現象が現れる. この点について現在得られている結果や問題点も述べる予定である.
本講演は久藤衡介(早稲田大学)、宮本安人(東京大学)、森竜樹(武蔵野大学)、四ツ谷晶二(龍谷大学)との共同研究に基づくものである.(敬称を省略します)
第1回
- 【日時】2021年5月13日(木)17:00~18:30
- 【場所】岡山理科大学 C3 号館8階応用数学科共同ゼミ室(南)& Zoom 配信によるハイブリッド形式
- 【講演者】大林 一平(岡山大学学術研究院環境生命科学学域)
- 【講演題目】A framework for machine learning with persistent homology
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【講演要旨】
パーシステントホモロジー(PH)はホモロジーを利用しデータの形の情報を定量的に抽出するためのツールである. データの特徴的幾何構造を捉えるためにPHと機械学習的な手法を組み合わせるのは最近良く研究されているアイデアである. 本講演では我々が提案している
(1) PH のベクトル化には Persistence Image という シンプルな手法を使う
(2) 機械学習の手法としては線形モデルを使う (線形回帰,ロジスティック回帰,PCA,NMF など)
(3) 学習結果に対応するホモロジカルな構造を逆解析と我々が呼んでいる手法を用いて元データの上にマッピングする,
という枠組みについて紹介する. この枠組みは精度よりも結果の解釈性に焦点を当てたものである. 本講演ではこの枠組みを材料科学に適用して得られた結果についても紹介する.以下の2つの論文がこの講演の主な内容である. 一つ目については平岡(京大),木村(KEK)との共同研究で,2つ目は平田(早稲田),和田(東北大AIMR),平岡(京大) との共同研究である
- Ippei Obayashi, Yasuaki Hiraoka, and Masao Kimura. Persistence diagrams with linear machine learning models. Journal of Applied and Computational Topology 1, 3-4, 421–449, (2018).
- Akihiko Hirata, Tomohide Wada, Ippei Obayashi and Yasuaki Hiraoka. Structural changes during glass formation extracted by computational homology with machine learning. Communications Materials 1, 98 (2020). https://doi.org/10.1038/s43246-020-00100-3